積み重ねた歴史の上に、これからを描く。菊美人が選んだ“変え方”とは。

菊美人酒造「移ひ菊」パッケージ_北原白秋が書いた題字


——従来の菊美人ブランドと"新しい菊美人"を比べて、変えた点・守った点はどこでしょうか?

大きく変えた点は、贈答で喜んでいただくということを明確にしたことだと思います。
この時に、パッケージやブランドや歴史など、私たちが大切にしなくてはいけないことが今までよりずっと増えたと思っています。
特に手にした時に高揚感を感じていただけるか、という点を最も意識しました。
守ったものも多くあり、今まで大切にしてきたことをきちんと伝わるようにしたいというのがリブランディングの目的です。
そのため酒造りに対する思いや酒造りの仕方は変えていません。
またパッケージについては、「菊美人」の題字は変えていません。菊美人ゆかりの詩人北原白秋の題字で、私たちにとっては昔から馴染みがあり地元の詩人を支援してきたというこれまでのスタンスを表すものだと思っています。

——「菊美人」の題字は北原白秋の墨書と伺いました。昭和16年(1941年)に書かれた題字を、今回のデザイン刷新と調和を図る上で、こだわったポイントはございますか?

白秋の題字を変更しないことは、デザイナーさんとの初回の打ち合わせで真っ先に決まりました。題字の美しさをデザイナーさんも評価してくださっていました。
女性的なしなやかさ、それでいて芯を感じる書体なので、自ずとデザインの方針も日本的・繊細・文化的なものといった点は固まったように思います。

パッケージデザインと素材選定

ことばにしない気持ちをそっと伝える。花束のようなパッケージへ。タントセレクトの繊細なエンボスから伝わる気持ち。

——タントセレクトTS-1を選ばれたきっかけは?

デザイナーさんより提案をされました。当初はTS-6を採用する予定でしたが、和の雰囲気が出しやすいという点でTS-1を選択いたしました。

——アートディレクター・デザイナー 小玉文さんからコメントをいただきました

菊美人酒造の酒造りの背景には〈文化〉を紡ぐ人々があります。 酒蔵と縁の深い北原白秋氏による美しい書や言葉の数々、 一滴一滴と落ちる酒の雫を長時間かけて集める〈雫しぼり〉を採用した造り手の想い……。
効率化や大量生産・大量消費社会に、優しくも凛とした姿勢で立ち向かう彼らの姿勢を 目にみえる形で表現することがミッションでした。
パッケージはお客様の手に直接触れ、造り手の想いを体感してもらう入り口となる存在です。 彼らの想いを表現するためにふさわしい手触りを求めたときに 布目のような質感の【 TS-1 】から感じる文化的な香りに惹かれました。強い主張をするわけではなく、しかし確かな個性があり、気づくと心地よいと感じる存在。
伝統的な和の佇まいのようでもあり、和洋に捉われない魅力を併せ持つこの紙に 白秋による〈菊美人〉の書を箔押しすることで、時代に捉われない魅力が生まれると感じました。 末長く愛していただけると幸いです。

——お客様やお取引様から届いた「パッケージの第一印象」や"紙の手触り "に関する声をご共有いただけますか?

パッケージについてありがたいことに多くのお褒めの言葉をいただいております。
特に手触りについてお褒めいただき、その繊細さから上質な印象を受けとるというお声をもらっています。
上質な手触りが、花を贈るようにという想い、菊美人の丁寧な酒造り、白秋の文字、和風なデザインを支え、品ものの上品さを一段と引き上げてくれていると思っています。

菊美人酒造「花冠」日本酒パッケージ

 

タントセレクトTS-1の見本帳_ファンシーペーパー
タントセレクトTS-1_紙の表面_エンボス

スリーブに使用されたタントセレクトTS-1N-9)。

 

クラウドファンディングについて

応援の声がブランドの方向性に確信を。クラファンの成果。

——先行販売として実施されたクラウドファンディングは、達成率260%/支援者200名という結果でした。手応えをどう受け止められておられますか?

予想を超えた多くのご支援、とてもありがたく感じています。30年ぶりのリブランディングで大幅な変化で不安な気持ちもありましたが多くの支援をいただけて励みになりました。
贈答用としてのニーズがあることも確認できましたし、応援を受けてさらに多くの方に菊美人を楽しんでいただけるようにいっそう励みたいという想いです。

——クラウドファンディングを通じて得た"ブランドストーリーの共感"や"お客様との距離感"に変化はありましたか?

クラウドファンディングを実施するにあたり、ブランドの要素を棚卸ししてストーリーとして仕立てました。今まで埋もれていた菊美人が大切にしていることが伝わりやすくなったと思います。
クラウドファンディングをご支援いただいた皆様から温かいお声をいただきました。菊美人が大切にしてきたこと、これからの挑戦に大きな応援をいただいたと感じています。
メーカーのため普段、お酒を飲んでくださる皆様と接する機会は多くありません。クラウドファンディングを実施して、菊美人を応援してくださる方がここまで多いことに気付けることができ、より一層お飲みいただく方に喜んでいただけるようになりたいと強く思った次第です。

今後の展望

形式ではなく、気持ちとして贈る。「花を贈るように」目指すこれから。

——「290年目の再出発」を迎えた菊美人酒造として、これから挑戦したいこと・実現したい体験はございますか?

「心を交わすよろこびを広げる」ということを事業ミッションに据えました。
まずは「花を贈るように」というテーマの日本酒で、少しでも多くの方に日本酒を通じて想いを伝え、大切な人と時間を共有する瞬間が増えることを目指そうと思います。
そして形式的な贈り物ではなく、ライフイベントやふとしたときにお酒を贈るということが当たり前の文化になることに挑戦していけたらと思っています。
孤立が進む社会の中で、少数の大事な人を大切にできる社会になることを目指していきます。

菊美人酒造_十代目・江﨑隆一郎専務(左)、九代目・江﨑俊介社長(右)

——今回、実際に菊美人酒造さまを訪問し、福岡県みやま市の豊かな風土や蔵のそばを流れる川の風景に触れながらお話を伺いました。
290年の歴史の中で積み重ねられてきた大切な想い、そして“これからの菊美人”を体現する一端として、タントセレクトTS-1をパッケージにご採用いただき、ありがとうございました。


インタビュー・画像協力株式会社菊美人酒造
公式オンラインショップ: 菊美人酒造 商品ページ
アートディレクション・デザイン : BULLET Inc. + 小玉 文
フォトグラファー:枦木功 ※写真(1,3,4,5,6,7,8)

■印刷加工情報
  使用紙  : タントセレクトTS-1N-9
  印 刷  : 『花冠』  オフセット印刷 特色3色+箔押し(2号金)
      『移ひ菊』  オフセット印刷 特色4色+箔押し(2号金)


―この記事を書いた人
 根木 美佳 特種東海製紙株式会社 特殊紙営業部 特殊印刷用紙課
  ファンシーペーパーを扱う営業部門で、プロモーション・販促活動を担当。
  大学では日本文学(近世・江戸)を専攻し、庶民文化の広がりや実学書の普及における「紙」と「印刷」の役割に強く惹かれる。
  卒業後は音楽・映像業界向けのパッケージ印刷会社で営業を経験し、紙という素材の持つ力と可能性にますます魅せられて現職へ。
  紙の魅力を広く伝えるべく、日々奮闘中。「Mr.B」と「レザック96オリヒメ」と同い年(1996年生)で、推し紙は「岩はだあさぎ
  趣味はお笑い鑑賞とウクレレ。


 

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