カメラ・レンズパッケージ―Sigma

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特種東海製紙株式会社

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採用事例紹介
SigmaのVI刷新とパッケージ ― 里紙が支える「ジャパニーズ・エレガンス」


カメラ・レンズメーカーSigma(シグマ)は、2025年2月にビジュアルアイデンティティ(VI)を刷新。
ブランドの核である“日本の精緻さと美意識”をより明確に打ち出しました。
パッケージ、同梱物も一新し、弊社のファンシーペーパー里紙をご採用いただいています。

今回は、株式会社シグマ 代表取締役社長 山木和人 様、購買部 橘様、プロダクトデザイン部 森行様に弊社三島工場・Pamにお越しいただき、VI刷新の背景や狙い、パッケージに込めた想い、そして「里紙」採用の経緯についてお話を伺いました。
“やり切る”設計方針に裏打ちされるSigmaの哲学、刷新後の反響と今後の展望にも触れます。

里紙が映す日本の美と精密さ。
Sigmaが目指す「ジャパニーズ・エレガンス」とは

ビジュアルアイデンティティの刷新の背景 ― 創業の精神を守るために変える

撮影/株式会社日々 杉山様

―――まずビジュアルアイデンティティ(VI)の刷新全体についてお伺いさせてください。

山木社長: 父・山木道広は1961年に当社を創業し、2012年1月に他界しました。私は大学院修了後に入社し、当時すでに30年以上勤めていましたが、父の死去を機に事業を継ぎました。
当社は全て日本でものづくりをしています。他社が海外生産に移行する中で、そのコストに対抗するには品質、他社にないスペック、独自技術、デザインへのこだわりで付加価値を高めること、そして日本の製造業として地域の雇用を守ることが国内一貫の生産体制を維持するために重要なことだと捉えています。

これは父の時代から取り組んできたことで、私も継いだ時から強く意識しています。

品質・スペック・デザインともに他社に負けない製品を作っているつもりですが、市場で戦う相手は世界的な大手カメラメーカーです。当社は大手カメラメーカーのカメラに対応する交換レンズやアクセサリーなどを製造していることもあり、サードパーティー=品質が劣る、代用品という先入観でみられがちです。
自分たちは良いスペック・品質・デザインでやっているつもりでも、お客様からの認知に壁を感じ、何とかしたいと考えました。
当社の社員の構成は、本社は約250人で7割以上がエンジニア、工場は約1600人で、直接製造に携わる人がほとんどです。
アイデンティティを新たに取り繕うのではなく、自分たちの価値や資産をどう伝えるか、エンジニアや工場の努力が正しく評価されるにはどうするか―。
そういった課題意識を長年抱えていたところ、スウェーデンの Stockholm Design Lab(SDL) と協議を重ねていく中でロゴの変更を含む総合的な刷新を提案されました。

ロゴを変えるのは大きな決断であり迷いはありましたが、当社は、父の代から創業の精神に基づき、良いものを世に届けるために時に大胆な決断も臆せず行うことでブランドをアップデートしてきました。
グスタフ・マーラーの言葉「伝統とは灰を崇拝することではなく、灯火を守ること」の通り、創業の精神を守るために、変えるべきものは変える。お客様へSigmaブランドをきちんと伝える手段として刷新が必要だと判断しました。

―――「リブランディング」という言葉は使われなかったそうですね。

山木社長: そうです。過去を否定して新しくするというニュアンスではなく、原点回帰。「今までがプアなブランドだから高級ブランドに路線を変更します。」というようなニュアンスが「リブランディング」という言葉に含まれていると感じ、この言葉は意図して使っていません。
「守るべきを守るために変える」ことが目的であり、当社では「ビジュアルアイデンティティの刷新」と呼びました。

言葉の選び方ひとつで狙いがぶれることがあります。エントロピーの第二法則ではありませんが、放っておけば無秩序に向かう。だからこそ、社風や文化は意識して作っていかなければならない。今回のVI刷新も、目的を維持するためには、言葉とコンセプトが大切だと考えていました。

パッケージの役割 ― ユーザーとブランドのコミュニケーション

――― パッケージをどのように捉えていらっしゃいますか?

山木社長: パッケージは、自分たちのブランドイメージを正しく、そしてSigmaのキャラクターを伝える重要な要素と捉えています。
Sigmaのキャラクターについて、当社の3つのビジョンからお話しします。
1つ目は、革新性、性能・品質、そして品位と美しさを兼ね備えた最高の製品づくりを通して、写真・映像表現の可能性と機会をひろげること。
2つ目が、常に驚きと喜びのある、誠実な関係構築を通して、お客さま、お取引先、そして(地域・国際)社会から最も愛され信頼されるブランドになること。
3つ目は従業員向けで、1人1人がプロフェッショナルとして、お互いを尊敬し合い、助け合う環境づくりを通して、社会と未来への信頼と希望を体現し、貢献すること。
このビジョンを元に、あらためてSigmaとはどういうブランドなんだ?という問いかけからスタートし、SDLとともにブランドの再定義を行いました。 そこでSigmaのエッセンスとして浮かび上がった要素のひとつが「ジャパニーズ・エレガンス」でした。

パッケージにおいてはこの「ジャパニーズ・エレガンス」の精緻さを追求しました。 これを体現できる素材として、海外のユーザーにも日本らしさを伝えられる紙を求め、幅広く検討しました。その結果たどり着いたのが、里紙 でした。

里紙との出会い ― 偶然が生んだ「ジャパニーズ・エレガンス」

―――里紙を採用するまでの経緯を教えてください。

山木社長: SDLとの打合せ後、立ち寄った青山見本帖株式会社竹尾様のショールーム)で、デザイナーたちと多くの紙を見比べていた際に出会いました。
まさにセレンディピティ(偶然の出会い)です。

その後も多くの試作と議論を重ね、日本的でありながらクラフト寄り過ぎず精緻感も感じられる、「ジャパニーズ・エレガンス」という求めていた要素に最も合致したのが里紙でした。

森行氏: 色の強弱や風合いを比較し、日本的アイデンティティを感じられる紙を幅広く検討しました。最終的に、素材・質感・精緻さすべてのバランスで里紙が最適だと判断しました。


細部まで“やり切る” ― 未来のSigmaを創る今

―――外装だけでなく、緩衝材やシール部分にもファンシーペーパーを使用されていますね。

森行氏: 細部までやり切ることが大切なので、同梱する冊子類やシールまで丁寧に仕上げました。

(外装箱:里紙+段ボール貼合、封入説明書類:里紙、中仕切り:TANT)

――― 弊社が言うのも僭越ですが、かなりのコストがかかったのではないでしょうか…?

山木社長: 市場全体でレンズの価格が上昇している中、製品の価値に見合う外装が必要だと感じていました。
「高いものを買ったときに相応しい装いを纏わせる」。パッケージも中身の品質を伝える重要なコミュニケーションです。
そして何より、細部が整っていなければ全体の印象も損なわれます。
建築でも仕上げがコンセプトの一貫性を支えます。短期的なコストよりも、20年・30年後に誇れる選択を優先しました。

我々はまだブランドを育てている段階。スタートアップの気持ちで、将来最高のブランドになるために今やるべきことを徹底しています。

Artのパッケージに使用した「里紙」濃紺 ― 別注色で生まれた深み

―――Sigmaのプロダクトライン:Artのパッケージに使われた濃紺は、「里紙」の既存色に無い新しく作った色になります。

山木社長: 既存の「こん」では明るすぎ、製品の世界観に合いませんでした。
プロダクトラインのArtは最高性能を誇るシリーズ。他のプロダクトラインと並べたときにも深みを持った色が必要でした。理想の色を求め、別注色を依頼しました。

特種東海製紙 岡村: 濃色は難しく、短期間で研究・製造部門が一体となり、原色設計から白色繊維の配合量まで調整を重ねました。試作を重ね38通りの手漉きサンプルから「里紙」の風合いと目標の色のイメージの両立を試行錯誤しました。

反響 ― 「本気度が伝わる」国内外からの声

山木社長: ロゴやパッケージ変更はリスクも伴いますが、結果的に市場から頂いた反応は非常に好意的でした。
特にパッケージはYouTubeなどの開封動画で話題となり、「これだけの外装なら中身も間違いない」「Sigmaの本気を感じた」といった声を多数いただきました。

森行氏: 発表前は、大幅な刷新ということもあり社内でも期待の反面、不安の声がありましたが、結果を見て納得の声に変わりました。

会津から世界へ ― MADE IN AIZU の誇りを胸に

   ©藤代雄一朗


―――
最後に、会津工場を中心としたものづくりと今後の展望についてお聞かせください。

山木社長: カメラ産業は世界的に日本メーカーが独占する稀有な産業です。その中で全製品を日本で作るのは当社のみ。日本ならではの高品質なものづくりでお客様を裏切らない、メイドイン・ジャパンの良さを貫きたいと思っています。
また、Sigmaのものづくりの中心・会津は過疎化が進む地域でもあります。雇用を守り、地域と共に歩む工場として、他に働き口がないから、ではなく、世界最高の製品を作るという誇りを持って働ける職場だから働きたい、と思ってもらえる企業であり続けたいと考えています。


会津は、戦国の乱世を経てなお、徳川家への忠義を貫き、その志を家訓として守り続けたという、誇り高い歴史を持つ土地でもあります。
地域への恩返しとしても、このようなメンタリティを受け継ぐ従業員や地域の皆様とともに、「光学といえば会津」といつか世界に認識されるよう会津でのものづくりを続けていきます。


日本の強みは、現場力の高さと細部へのこだわりです。
世界や同じアジアにも優秀な方は多いので、日本だけが特別とは思いません。ただ、日本の素晴らしさはオフィスや工場で働く一般の従業員のレベルが抜群に高い点です。
経営者にアイデアがあっても実行が適当ではうまくいきませんが、日本は現場が強い。細部にこだわり高品質なものを作る点で日本は世界一だと思っています。
ローカルを極めてこそグローバルに通じる―ブルゴーニュやスコッチのように、土地の文化を背負ったものが世界に広がるよう、私たちも「会津発のブランド」を目指しています。





―――今回、三島工場・Pamにお越しいただき、VI刷新の背景からパッケージの細部に込めた意図、そして会津でのものづくりへの想いまで、じっくりお話を伺うことができました。 日本の精緻さと美意識を体現するパッケージ素材として「里紙」をご採用いただいたことを、紙づくりに携わる者として大変光栄に感じています。
「里紙」は心のふるさと、郷愁をキーワードとして生み出され、その色彩は、日本の四季折々の自然の営みが多彩に染め上げた里山の色を再現しました。
会津から世界へ発信するSigmaブランドの歩みに、今後も紙を通じて、その価値に寄り添える存在であり続けたいと感じています。このたびはパッケージへ「里紙」をお選びいただき、また貴重なお話をお聞かせくださり、誠にありがとうございました。


 

■取材協力

インタビュー協力・画像提供 株式会社シグマ様
代表取締役社長 山木和人様、購買部 橘永知様、プロダクトデザイン部 森行浩人様
協力 株式会社竹尾様


パッケージデザイン情報・印刷加工情報

パッケージデザイン Stockholm Design Lab(SDL)
Sigma紹介ページ(SDLウェブサイト内)
パッケージの使用紙 外装箱 :里紙+段ボール貼合 | 封入説明書類:里紙
中仕切り:TANT N-1
パッケージの印刷・加工 箔押し(色箔:黒)、空押し、印刷(黒/白)


―この記事を書いた人
 根木 美佳 特種東海製紙株式会社 特殊紙営業部 特殊印刷用紙課
  ファンシーペーパーを扱う営業部門で、プロモーション・販促活動を担当。
  大学では日本文学(近世・江戸)を専攻し、庶民文化の広がりや実学書の普及における「紙」と「印刷」の役割に強く惹かれる。
  卒業後は音楽・映像業界向けのパッケージ印刷会社で営業を経験し、紙という素材の持つ力と可能性にますます魅せられて現職へ。
  紙の魅力を広く伝えるべく、日々奮闘中。「Mr.B」と「レザック96オリヒメ」と同い年(1996年生)で、推し紙は「岩はだあさぎ
  趣味はお笑い鑑賞とウクレレ。

 

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