「Frantz」のパッケージに採用された「TANT」──色はブランドの言語になる
採用事例紹介 神戸発スイーツブランド「Frantz」。“フランツレッド”の世界観を支える貼箱と「TA...
特種東海製紙株式会社
採用事例紹介
主要和菓子箱を全面リニューアル。
環境配慮の取り組みの一環で「たねや」がパッケージ用紙に選んだ「バガスシュガーF」
滋賀県近江八幡で1872年に創業し150年以上の歴史をもつ和菓子ブランド「たねや」は、2024年12月に主要な和菓子箱の全面リニューアルを実施しました。
お菓子づくりと同じくらい大切にしてきた“装い”を、環境負荷低減の視点から見つめ直し、新たな和菓子箱へと更新しました。
本記事では、リニューアルに至った背景や、パッケージをどのように捉えているのか、さらに「バガスシュガーF」採用の理由、リニューアル後の反響、今後の展望について伺いました。
パッケージを単なる包材ではなく、ブランドの姿勢を伝える存在としてどう考えるか。そのヒントを、たねや様の事例からひもときます。
―――和菓子箱の全面的なリニューアルに至った背景・目的をお教えください。
たねや アート室 デザイナー: 和菓子箱の全面リニューアルは、お菓子の素材や製造時だけでなく、環境配慮を目指す弊社の取り組みの一環として実施しました。
多くのお客様が手にする主要な箱を見直す必要性を感じたことが大きな理由です。
また、和菓子箱以外のパッケージや副資材についても「過剰ではないか」という視点から見直しを進めています。
環境負荷の低減を意識して進める流れの中で和菓子箱も環境に配慮した形へ整えることになりました。
―――現在、和菓子箱はおおよそ何種類ほどございますでしょうか?
たねや 商品企画室 ご担当者: 貼箱としては年間約300種の取扱いをしております。
それに加え、季節限定箱も取扱っております。
―――パッケージ、包材についてどのように捉えられていますか?
たねや アート室 デザイナー: たねやではパッケージを、お菓子づくりと同じくらい大切な要素として捉えています。
名誉会長の故・山本德次は「お菓子は自分の子どものようなもの。その服を選ぶのは親の役目」という想いで、自社内にパッケージをデザインする専任部署を設立。
現在もその精神は受け継がれており、現社長も同じ想いで、お菓子の魅力を引き立て、手に取っていただく瞬間にワクワクや安心感をお客様に与えられるパッケージ作りを大切にしています。
―――「バガスシュガーF」を選ばれた理由をお聞かせください。
たねや アート室 デザイナー: 環境負荷の少ない紙を使いたいという想いから、さとうきびの搾りかすを活用したバガスシュガーFを採用しました。
アップサイクルによる環境面でのメリットに加え、素材がもつ自然な色合いや優しい風合いも採用の決め手となりました。
―――リニューアル前からデザインも変更になりましたが、今回のリニューアルでこだわったポイントをお聞かせください。
たねや アート室 デザイナー: 今回のリニューアルでは、素材がもつ自然な紙の色味や質感を活かしたデザインにこだわりました。
印刷には、着物の地模様を思わせるパール印刷を施し、角度によってさりげなく表情が変わる上品な仕上がりをイメージしています。
パッケージ全体を白で統一し、素材の風合いと上質さを表現することでやわらかな印象となるようこだわりました。
バガスシュガーF
砂糖を製造する工程で生まれる副産物「バガス(さとうきびの搾りかす)」を原料の一部に活用した高級印刷用紙です。
バガスパルプを10%以上配合し、自然な色合いとやわらかな風合いが特長。素材そのものの表情を活かした上質なパッケージ表現に適しています。
厚みや製品の詳しい情報についてはコチラをご覧ください。
―――2024年12月の和菓子箱リニューアルから、お客様からの反響や、ブランドのイメージにかかわる変化はございましたか?
たねや 商品企画室 ご担当者: デザインが変わったことについてご質問をいただき、お答えすると「さすがたねやさん。環境についての取り組みが伝わってきます」とお声をいただきます。
ブランドイメージが変化するということではなく、取り組みについてご理解をいただけている印象です。
―――今後目指される「たねや」の姿をお教えください。
たねや 広報室 ご担当者: たねやでは、自然を守るお菓子作りの追求とともに自然環境の保護と持続可能な社会の実現を目標としています。
近年の環境問題による原材料(米や小豆など)への影響はとても大きく、自然が育む原材料が採れなくなってしまうとたねやはお菓子屋を続けることはできません。
今後も安心、安全で美味しいお菓子をお客様へお届けするためにも、環境負荷低減を目指した包材の見直しや森づくりなど豊かな自然を守り伝える活動を進めていきます。
たねや様では、装いだけでなく、お菓子そのものにも長く受け継がれてきたこだわりがあります。最後に、ブランドを象徴する代表銘菓について伺いました。
たねや 広報室 ご担当者:たねやの銘菓のうち代表的な「ふくみ天平」と「たねやカステラ」をご紹介いたします。
ふくみ天平
求肥入りの餡を芳ばしい種ではさんでいただく手づくり最中はたねやの代表銘菓です。
焼きたての最中種に、瑞々しい餡をはさんで食べる美味しさは、長いあいだ職人だけが知る味わいでした。
その味を伝えたいとお菓子にしたのが1983年のこと。
最中種と餡の装いを2つにわけ、お召し上がりの直前にあわせていただくことで最中種のパリっとした食感と瑞々しい粒餡をお楽しみいただけます。
たねやカステラ
ふんわり、しっとり焼き上げた新しい食感のカステラです。
2016年に新しく誕生したたねやカステラは、焼きたての食感や卵の風味をもっとお楽しみいただきたい、そんな思いで生まれました。
長年のカステラづくりで培われた細やかな職人の感性と手わざで、一つひとつ焼き上げています。
ふんわりとやわらかく焼き上げたカステラに、北海道産小豆を使用した、なめらかで瑞々しい餡をかけてお楽しみいただく一品です。
――― 今回の和菓子箱リニューアルは、単なるデザインの刷新にとどまらず、「お菓子づくりと同じ熱量で装いを考える」というたねやグループの姿勢そのものを体現した取り組みでした。
お菓子を包む箱や副資材を見直す——そのプロセス自体が、たねやグループが掲げるサステナビリティの考え方、「大切にするきもち」の実践なのだと感じます。
パッケージ素材にバガス(さとうきびの搾りかす)パルプ配合の紙を選び、紙本来の色味や質感を活かしながら、パール印刷でさりげない品を添える。環境負荷の低減と、手にした瞬間の心地よさ・高揚感を両立させる設計には、装いを「お菓子の一部」として捉える想いが表れていました。
包装や容器の見直しは、単に「削減」という文脈で語られることも少なくありません。けれど本来、パッケージは“守る・伝える・手渡す”という役割を担うものです。紙という素材は、用紙の選択や印刷・加工の設計次第で、機能と美しさを保ちながら環境負荷低減にも貢献できる余地があります。
たねや様の取り組みが示していたのは、環境配慮を我慢ではなく、よりよい体験の作り直しとして積み上げていく可能性でした。
今回の取材では、滋賀県近江八幡を訪れ、たねやグループ本社のあるラ コリーナ近江八幡にも足を運びました。ラ コリーナは「自然に学ぶ」をコンセプトに掲げる、たねや・クラブハリエのフラッグシップ店です。実際に歩いてみると、この場所は完成した瞬間がゴールなのではなく、時間をかけて育っていく場所なのだと感じました。アプローチで出迎えてくれるおかめ笹をはじめ、景色そのものが年を重ねながら育まれていく――そんな未来へ向けて育てる視点が、この場所には息づいているように思えます。
その感覚は、今回の和菓子箱リニューアルともどこか重なります。短期的な合理性だけでなく、これから先にどんな景色を残したいか、どんな素材を選ぶべきかを見据えること。手間暇をかけてつくったお菓子の装いを整え、気持ちまで包んで送り出すという姿勢の根っこに、ラ コリーナで感じた時間の流れが通じているように思いました。
また、取材に先立って訪れたLAGO 大津でも、たねや様の思想の一端に触れることができました。そこでいただいたおこわには和菓子に使われるこし餡をつくる過程で取り除かれた小豆皮も使われており、素材をできるだけ活かそうとする姿勢が、食体験の中にも自然に織り込まれていることが印象に残りました。
貴重なお話をお聞かせいただき、誠にありがとうございました。
■取材協力
| インタビュー協力・画像提供 | 株式会社たねや |
■パッケージ情報
| パッケージの使用紙 | バガスシュガーF (バガスパルプ10%以上配合) ※バガスパルプとは砂糖を製造する工程で必ず発生する副産物=バガスを原料にしたパルプ。 廃棄物を資源化する循環型のものづくりにつながります。 |
| パッケージの印刷 | パール印刷 |
―この記事を書いた人
根木 美佳 特種東海製紙株式会社 特殊紙営業部 特殊印刷用紙課
ファンシーペーパーを扱う営業部門で、プロモーション・販促活動を担当。
大学では日本文学(近世・江戸)を専攻し、庶民文化の広がりや実学書の普及における「紙」と「印刷」の役割に強く惹かれる。
卒業後は音楽・映像業界向けのパッケージ印刷会社で営業を経験し、紙という素材の持つ力と可能性にますます魅せられて現職へ。
紙の魅力を広く伝えるべく、日々奮闘中。「Mr.B」と「レザック96オリヒメ」と同い年(1996年生)で、推し紙は「岩はだ」あさぎ!
趣味はお笑い鑑賞とウクレレ。